千慮の一失
意味:賢い人でも多くの考えの中には一つくらい間違いがある。
千慮の一得
意味:愚かな人でも多くの考えの中には一つくらい良いものがある。
※「敗軍の将は兵を語らず」の続き
(韓信は捕虜の広武君に教えを乞うが、断わられる。)
韓信が言った。「私はこう聞いています。『秦の宰相になった百里奚は、虞にいる時は虞が滅亡し、秦にいる時は秦が覇者となった。』これは、百里奚が虞にいた時に愚者になり、秦にいた時に智者になったわけではありません。百里奚を用いるか用いないか、聴くか聴かないかの違いです。もし成安君があなたの計略を聴いていれば、韓信ごときはすでに捕らわれていたでしょう。あなたが用いられなかったからこそ、韓信はあなたのそばに侍る機会を得られたのです。」そして韓信は強く尋ねて言った。「私は心をあなたに委ね、あなたの計略に従います。どうか私の願いを断らないでください。」
広武君が言った。「私はこう聞いています。『智者でも千の思慮の中に一つは失敗がある。愚者でも千の思慮の中に一つは得るものがある。』だからこうも言われています。『狂人の言葉でも、聖人は択ぶことがある。』私の計略が、必ずしも用いるに足るかどうか心配ではありますが、願わくは、忠義をつくさせていただきましょう。」
『史記 淮陰候列伝』

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