王侯将相いずくんぞ種あらんや（おうこうしょうしょういずくんぞしゅあらんや）

王(おう)侯(こう)将(しょう)相(しょう)いずくんぞ種(しゅ)あらんや
意味：立派な人物になるのに家柄は関係ない

　呉(ご)広(こう)は普段から人を愛(いと)おしんだ。兵士の中には、呉(ご)広(こう)の役に立ちたいと思うものが多かった。指揮官が酔っている時、呉(ご)広(こう)はわざと何度も「逃げ出したい。」と言って指揮官を怒らせ、呉(ご)広(こう)自身を侮(ぶ)辱(じょく)させることで、他の兵士が指揮官へ激怒するようにした。指揮官は呉(ご)広(こう)を鞭(むち)打ちにしたが、その時、指揮官の剣が抜けた。呉(ご)広(こう)は立って剣を奪い、指揮官を殺した。陳(ちん)勝(しょう)はこれを助けて二人目の指揮官も殺した。陳(ちん)勝(しょう)と呉(ご)広(こう)は周りの者を集めて言った。「君たちは大雨にあったせいで、すでに期限に遅れてしまった。期限に遅れたら死刑と決まっている。たとえ死刑にならなかったとしても、辺境の防衛に行けば、十人に六、七人は死ぬだろう。立派な男として、死なないならばそれもよい。しかし死ぬのであれば、大きな名声を挙げて死のうではないか。王や諸侯や将軍や宰(さい)相(しょう)になるのに、どうして家柄(いえがら)など関係あるだろうか。」

　周りの者は皆言った。「つつしんで命令に従いましょう。」

『史記　陳(ちん)渉(しょう)世家』